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不妊鍼灸の基礎知識(月経周期による鍼灸)

 女性の身体は月経周期の中で大きく変動します。
大きくは女性ホルモンや、
そのもっと上位のホルモンからの影響なのですが、
それらの仕組みを少し理解すると妊娠への秘訣が見えてくるかもしれません。
女性が自分の身体を知る手助けになれば幸いです。

1.月経周期とホルモン

 月経周期は大きく月経期、卵胞期、排卵期、黄体期とあり、
その後妊娠しなければ再び月経が起こり月経期となります。
まず脳の視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRh)と呼ばれるホルモンが放出され、
その指令を受けて下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体刺激ホルモン(LH)が放出されます。
この二つ(FSH,LH)は共に卵巣や子宮に働き、
卵胞が成熟したり子宮内膜が肥厚したりします。

 FSHの影響で成熟した卵胞は約20mm前後まで成長すると、
LHの高まりと共に放出され排卵されます。
FSHの影響で卵胞が成熟されると、
成熟した卵胞からはエストロゲンが放出されます。
また排卵後の卵胞は黄体に変化し、
黄体からもエストロゲンが放出されます。

 更に黄体からは黄体ホルモンであるプロゲステロンが放出され、
体温表で見る高温期を維持する働きをします。
エストロゲンも高温期を維持する働きをしているため、
妊娠中はこの二つのホルモンは高い状態を維持します。

 不妊治療でよく使用されるホルモン剤は、
ここに出てきたLHやFSH、エストロゲン、プロゲステロンが多いです。
またこれらを増やすために性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRh)もよく使用されます。

 ここで注意ですが、
元々正常にホルモンが出ている場合には、
外から薬剤で足すことで自分の力が落ちることがあります。
ホルモン剤を使用することで月経周期を予定通りに進めることは出来ますが、
不必要な薬剤をしようすることで自分の能力を下げてしまっては元も子もないように思います。

 また植物性エストロゲンも同様に、
閉経後や更年期に少なくなったエストロゲンを足すことが出来るため、
健康食品やサプリメントなどで多用されますが、
そもそも妊娠が可能な程度ホルモンが出ていているなら、
外から足すことは弊害が多く推薦出来ません。
サプリメントで外から足すことで、
自分が持っている能力を落とすことは多くの研究結果で明らかです。

 ホルモン剤やサプリメントなどで自分の能力を落とすことは、
医源性不妊に繋がりますので注意して下さい。
自分の力を上げることは良いのですが、
わざわざ落とす行為に関しては慎重に考慮して治療を受けるべきです。

2.皮下脂肪と女性ホルモン

 第二次性徴の頃になると、
女性は丸みを帯びた体型になり、
性腺の成熟と共に皮下脂肪が付いてきます。
この皮下脂肪からはペクチンと呼ばれるホルモンが賛成されます。
レプチンは食欲をコントロールするとして、
ダイエットの世界で注目されていますが、
実はペクチンにはもう一つ大きな作用があるのです。

 レプチンは更にキスペプチンと呼ばれるホルモンを増やすことで、
先に出てきた性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を増やすことが知られてきました。
GnRHが増えると更にFSHやLHも増えますので、
皮下脂肪を増やすことで月経周期が安定化し、
妊娠しやすい身体を作ることが出来ます。

 逆に皮下脂肪を落とすとレプチンが減少し、
キスペプチンの低下からGnRHが減ってしまうことも分かっています。
つまり皮下脂肪が減ることで結果的に性腺刺激ホルモンや女性ホルモンが減ってしまい、
ホルモン低下から不妊へと移行するのです。

 また皮下脂肪が増え過ぎて食欲中枢が狂ってしまうと、
やはりレプチンは正常に分泌されません。
そのため太りすぎても不妊傾向は強まります。

 適正な体重管理は不妊治療の第一歩と言えるかもしれません。

3.月経周期と不妊治療(※28日周期の場合)

 月経にはおおまかに月経期〜黄体期があることは先に書きました。
それぞれの時期を理解して治療を行うことは不妊治療では必須です。
全体の時期を通して共通なこともありますが、
特に時期により特徴的なことを考えていきます。

a.月経期(1〜5日目前後)

 月経期には必要なくなった内膜をしっかりと体外に排出することが大事です。
 その為には気血の巡りを良くして上げる必要があります。
 これには鍼灸で血を巡らせたり要らない血を下すツボを使います。

b.卵胞期(5〜12日目前後)

 この頃から卵胞が急激に大きく膨らみ始め卵が成長していきます。
良質の卵を作るには、
この時期には卵胞内を良質の卵胞液で満たしておく必要があります。
栄養の摂り方にも気を配る必要がありますが、
それ以上に血液循環に気を配りましょう。
徐々にお腹の張りが出てきますが、
気血の巡りが良ければお腹の張りは痛いほどにはなりません。

 内膜の肥厚も急激に進むため、
腹部への治療は欠かせません。
お腹の状態を観察しながら、
温かく適度の張りがありながらも柔らかなお腹を作ります。
お腹の状態は子宮や卵巣の状態を表しますので、
冷たく固いお腹はいけません。

c.排卵期(13日〜15日目前後)

 いよいよ排卵の時期です。
排卵は貯えたエネルギーを一気に放出するため、
お腹の張りや胸の張りが一時的に無くなります。
この時期に上手く排卵が出来ない方では、
この張りが強いまま残ってしまい上手く排卵が出来ません。

 気の鬱滞を防ぐために、
鍼灸治療で気滞の治療を行います。
気滞が取り除かれると、
排卵と同様に胸の張りや下腹部の張りが取り除かれます。

 排卵期には子宮内膜が分厚くフカフカになっている必要があります。
また受精のために頚管粘液がサラサラでしっかり出ている必要があります。
さらに内膜の表面にもしっかり分泌物が出るように、
子宮の周囲の血流がスムーズであることは重要なことです。

 肩こりなどの症状を取り除いておくことも、
気滞治療では大事なことです。

d.黄体期(16日〜28日目前後)

 黄体期にはしっかりとした高温期を作ることが重要です。
高温期はプロゲステロンとエストロゲンがしっかり働くことが重要です。
当然卵巣や子宮周辺の血流が十分であることは、
両臓器への栄養補給とホルモン運搬に欠かせません。

 また妊娠したときの胎盤形成にも血流と栄養は欠かせませんので、
お腹の状態は常に確認します。
またスムーズに血液が循環すれば、
血行障害で血液が凝固するのもある程度は防ぐことが出来ます。

 初期流産では98%が先天異常とされますが、
その後の流産には血栓などが含まれます。
この時期からしっかり血を巡らせることは、
着床だけでなくその後の妊娠維持にも非常に重要です。

 この時期にたばこへの暴露は極力止めましょう。
そういう場への同席も出来れば避けて下さい。

4.妊娠以降の鍼灸治療

 妊娠が成立後の治療に関しても質問が多いので掲載します。

a.妊娠4〜5週

 ほぼ妊娠が分かったときです。
妊娠反応は4週(月経予定日)から徐々に出始め、
その後1週間でほぼ確定します。
つまり妊娠5週ではしっかりと妊娠反応が出なくてはいけません。
 産科のエコーでは胎嚢確認が出来ます。

 この時期は非常に敏感な時期ですから、
あまり刺激の強い治療はお勧め出来ません。
妊娠を維持して次の胎盤形成までの準備期間として治療します。
不必要な刺激を加えることなく、
繊細な技術が必要とされます。

b.妊娠6〜8週

 この時期になると胎児の心拍確認が出来ます。
胎芽と呼ばれる時期から徐々に胎児と呼ばれる人の形になってきます。
妊娠反応からこの時期までは絶対過敏期と呼ばれ、
非常に薬剤や栄養障害の影響が出やすい時期です。

 それはこの時期まで急激な細胞分裂や各器官の形成が行われるからで、
この時期に薬を使用したり栄養失調があったりすると、
各器官の形成不全が起こり奇形が起きます。
口から入れるものに特に注意が必要な時期といえるでしょう。

 この時期になると早い人なら悪阻(つわり)が出てきます。
悪阻の対策も含めての治療を行います。
実は悪阻も様々な原因で起こりますので、
それに合った治療を行うことになります。
一般的な悪阻の治療では内関といわれるツボが使われますが、
当然ながら全ての悪阻に効く訳ではありません。

 ただこの時期はまだ赤ちゃんと胎盤は繋がっていません。
つまり栄養不足の影響は直接的には赤ちゃんには出ませんので、
あまり極端でなければ悪阻を気にすることはありません。
あくまでの数週間や数ヶ月先を見越して治療をすることになります。

c.妊娠8〜12週

 ここまでくれば妊娠も一つの山場を越えたことになります。
心拍確認からここまでスムースにこれた方は、
ある程度安心だといえます。
勿論初期以外の流産もありますので体調管理は必要ですが、
この時点で鍼灸治療を卒業される方も多いです。

 ここから先は胎児の健康と母体の安定、
更に出産に向けての身体作りが本格的になります。
ここからの治療は少し間隔を空けて、
2週に1回から月に1回程度の頻度で行います。

d.妊娠36週〜

 いよいよ出産に向けた準備となります。
最近は陣痛促進剤も比較的簡単に使用しますが、
子宮口が開いていないのに上から圧されることで、
更に辛い出産になります。
そこで前もって鍼灸治療で準備をしておくのです。

 この頃になると腰下肢の痺れや引きつりなどが起こりやすく、
腰痛や恥骨痛も出てくるためにそれらの治療も同時に行います。
必要に応じて腹帯の巻き方を教えることもあります。

 産後は養生のために通院して頂くこともありますが、
産後1ヶ月以上してからでも結構です。
不安な場合は前もってメールなどでお問い合わせ下さい。
通院患者さんに限っては、
体調を把握出来ていますのでメールでの詳細な問い合わせにも対応可能です。
出産前に来院されていない方は、
メールでの細かいご質問にはお答え出来ません。
体調が把握出来ないからです。