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高齢での不妊治療

 30代後半以降の不妊治療では、
治療に少し工夫が必要かもしれません。
これは薬の量を増やしたり、
焦って体外受精の回数を増やすこととは違います。

1.高齢による問題点

 一般的に、
年齢は不妊治療に於いてマイナスの要因として働きます。
ではどういった点がマイナスなのでしょう。

・採卵出来る数が減る

  月経が始まる時期の女性で約30万個の原始卵胞があります。
 その後毎月1回につき1個の排卵がありますが、
 この1個の排卵のために複数の卵胞が育ち、
 排卵することなく吸収されます。
 つまり毎月1個ではなく、
 複数個の卵子が無くなっていくのです。
  また成長させる能力も、
 排卵する能力も低下していきます。

・採卵する卵の質が悪くなる

  これは複数の条件が重なってですが、
 一般的には年齢と共に質が悪くなるとは言われます。

・内膜の厚さが薄くなる

  これも年齢と共に月経の量や、
 内膜の厚さが薄くなることは皆さんが経験するところです。

・流産の確率が高くなる

  全妊娠の内、
 約10〜15%は流産をするとされています。
 これは自然流産で、
 染色体異常や遺伝子異常が大半とされています。
 35歳以上の場合、
 この流産の確率が20%になります。

・奇形児や障害児の確率が高くなる

  奇形やその他先天障害の確率は、
 自然な状態でも一定存在しますが、
 ダウン症に限っても20代で0.1%、30代で0.2%なのが、
 40代では1%となり20代の約10倍となります。
  また先天障害は流産とも関連します。

2.高齢での不妊治療でのポイント

 1の問題点であげたリスクを如何に低くするかは、
高齢での不妊治療では大きな課題ではないでしょうか。
少しでもリスクを減らし、
妊娠や出産を無事終えるように、
幾つかの対策を挙げます。

・栄養

  栄養の摂取と先天障害や流産との関連は、
 実は非常に密接なものです。
 ざっと挙げるだけでも、

●妊娠前に野菜や果物を摂らないと、子宮内発育遅延になる。
●妊娠前の葉酸摂取は早産リスク低減に関連する。
●妊娠中に魚を食べると子どもの脳の発育に良い。
●葉酸は卵胞の発育環境を向上させる。
●葉酸は口唇口蓋裂や二分脊椎の発生リスクを減らす。
●脂肪酸の摂取バランスが良いと体外受精の成功率が上がる。
●精子の質が悪い男性は抗酸化食品の摂取が少ない。
●リコピンが内膜症の癒着を緩和する。
●トランス脂肪酸は胎児死亡を増加させる。
●妊娠前のマルチビタミンの摂取は小児癌を予防する。

 これ以外にも、
様々な栄養と妊娠や健康な出産に関する報告は、
幾らでもあります。
栄養を適切に摂取することは、
高齢での妊娠・出産には欠かせません。

 当院でも、
栄養療法のみで不育症の方が無事出産したり、
採卵数が増えたり、
卵の質が改善したりするのは確認済みです。

 偏った栄養の摂取や食養生は、
ただの偏食ですので気を付けて下さい。
また栄養以外のものを口から摂る場合にも気を付けましょう。
これは漢方薬でも同様です。
 
 口から入ったものは、
基本的に小腸で吸収され肝臓に到達します。
そこで形を変えられたり解毒されたりして、
目的器官に到達します。
薬剤も例外ではありませんので、
複数の薬剤(漢方薬も)を飲んでいる場合には、
肝臓にとってかなりの負担になることは間違いありません。

 血液検査で肝臓関連の数値を観察すると、
肝臓の壊れよりも働きの弱さと不妊は関係が深そうです。
つまり肝臓が弱っている人間は不妊傾向があるということです。

 鍼灸治療では、
この栄養の含まれた血液を滞りなく目的器官に届ける働きを、
円滑に行う働きを助けます。
また弱った可能の働きを助け、
物質代謝の力を上げることで、
良い卵を育てる手助けをします。

勿論、
栄養療法では血液の中を理想的な状態にします。
卵の成長に必要な栄養を卵巣にしっかり送り込み、
数少ない卵胞をしっかりと育てて良質な卵にします。

・血流

 血の巡りが悪い状態では、
卵の成長に必要な栄養や、
内膜の肥厚に必要な栄養も子宮や卵巣に届きません。
 また滞った血液は固まりやすく、
胎盤で詰まったり流産の原因になります。

 血液循環を良くするためには、
適度な運動やストレス管理、
抗酸化食品(ビタミン)などの摂取は欠かせません。

 手っ取り早く血液循環を良くするには、
運動習慣が一番ですが、
30代後半以降の年代では、
この運動習慣もない人が多いようです。
金銭的負担の大きい高度不妊治療を行う人が多いため、
どうしても仕事を持っている人が多く、
座りっぱなしの時間や、
決まった姿勢の時間が長く血液循環は悪くなりがちです。
 
 また女性に多い冷え性も問題になってきます。

鍼灸治療では、
血流を促したり血を固まりにくくして血行を助けます。
また強ばった筋肉を解して、
心身共にリラックスさせ更なる血行促進作用があります。

・ストレス

 実は一番問題なのがストレスでしょうか。
高度不妊治療を受けるストレスや、
毎月毎月来て欲しくない月経を迎えるストレス。
周囲に対する焦り、
配偶者に対する申し訳なさ、
その他諸々のストレスが患者さんを襲います。

 精神的なストレスは、
血液循環を悪化させたり、
活性酸素を発生させたりします。
酸化ストレスは、
卵の質を悪くします。

 このストレスを如何に緩和するかですが、
当院ではあまりにも不妊と戦う姿勢を明確にせず、
あくまでも自然な生活の一部として治療を行い、
知らぬ間に体調が良くなることを目指します。

 あまりにも気合いを入れすぎては、
結果が出る前に疲れてしまいます。

 不妊治療は自分の身体との対話です。
体調が良くなることなく結果が出ることはありません。
そのためあまりにも長時間、強刺激な治療は行いません。

 体調を整える治療があり、
結果を出す治療があり、
それらが共存していないと、
その後の健全な妊娠・出産には結び付かないのです。